これまでの説明で、SSH を使った認証ありのプロトコルと git://
を使った認証なしのプロトコルについてわかったと思います。続いて、それら両方を実現してしまうプロトコルについて説明しましょう。
Smart HTTP のセットアップは、単に CGI スクリプトをひとつ、Git サーバー上で有効にすればおしまいです。Git に同梱されている git-http-backend
というスクリプトを使います。
この CGI は、パスやヘッダー情報(git fetch
や git push
で特定の HTTP URL 宛に送られてきたデータ)を読み込み、クライアントが HTTP を使ってやりとりできるかどうか判断します(バージョン 1.6.6 以降の Git クライアントであれば対応しています)。
そして、CGI の判断が「このクライアントは Smart HTTP に対応している」だった場合は Smart HTTP が使われ、そうでなかった場合はリードオンリー(``dumb'')にフォールバックします(後方互換という意味では、読み込みについては古いクライアントにも対応しています)。
では、標準的なセットアップ方法について説明しましょう。ここでは、Apache を CGI サーバーとして使います。Apache がインストールされていない場合は、Linux サーバー上で以下のようなコマンドを実行してください。
$ sudo apt-get install apache2 apache2-utils
$ a2enmod cgi alias env rewrite
そうすれば、 mod_cgi
、 mod_alias
、 mod_env
、 mod_rewrite
も有効になります。いずれも、Smart HTTP の動作に必要なものです。
また、/opt/git
ディレクトリのグループを www-data
に変更しなければなりません。CGIスクリプトを実行するApacheのインスタンスはデフォルトではそのグループの1ユーザーとして実行されるからです。設定を変更しておけば、ウェブサーバーは自由にリポジトリを読み書きできるようになります。
$ chgrp -R www-data /opt/git
次に、Apache の設定をします。git-http-backend
をハンドラにして、ウェブサーバーの /git
パスにアクセスがあった場合にそれに処理させるための設定です。
SetEnv GIT_PROJECT_ROOT /opt/git
SetEnv GIT_HTTP_EXPORT_ALL
ScriptAlias /git/ /usr/lib/git-core/git-http-backend/
環境変数 GIT_HTTP_EXPORT_ALL
を設定しない場合、クライアントからのアクセスは読み込み専用になり、読み込めるのは git-daemon-export-ok
ファイルが保存されたリポジトリだけになります。Git デーモンと同様の挙動です。
最後に、Apacheの設定を2つ変更します。 git-http-backend
へのアクセスを許可する設定と、書き込みを認証するための設定です。Auth ブロックを使う場合、以下のようにして設定できます。
RewriteEngine On
RewriteCond %{QUERY_STRING} service=git-receive-pack [OR]
RewriteCond %{REQUEST_URI} /git-receive-pack$
RewriteRule ^/git/ - [E=AUTHREQUIRED]
<Files "git-http-backend">
AuthType Basic
AuthName "Git Access"
AuthUserFile /opt/git/.htpasswd
Require valid-user
Order deny,allow
Deny from env=AUTHREQUIRED
Satisfy any
</Files>
さらに、対象ユーザー全員のパスワードが記述された .htaccess
ファイルが必要です。ユーザー ``schacon'' を追加したい場合は、このようなコマンドを実行します。
$ htpasswd -c /opt/git/.htpasswd schacon
ユーザー認証を Apache で実施する方法はたくさんあります。 ひとつ選んで設定してください。 ここでは、思いつく限り一番シンプルな方法を説明しました。 また、HTTP 通信が SSL 経由で行われるように設定しましょう。 そうすれば、データはすべて暗号化されます。
ここでは、Apache 設定の詳細についてはあえて立ち入らないようにしました。
Apache 以外の ウェブサーバーを使う場合もあるでしょうし、認証の要求も多様だからです。
覚えておいてほしいのは、Git には git-http-backend
という CGI スクリプトが付属していることです。
それが実行されると、HTTP 経由でデータを送受信する際のネゴシエーションを処理してくれます。
このスクリプト自体は認証の仕組みを備えてはいませんが、ウェブサーバーの機能で認証は簡単に管理できます。
CGI に対応している ウェブサーバーであればどれも使っても構いません。一番使い慣れたものを使うのがよいでしょう。
Note
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Apacheを使った認証設定の詳細については、Apache の公式ドキュメント http://httpd.apache.org/docs/current/howto/auth.html を参照してください。 |